グローバル展開を目指す企業向け:海外税務リスクとその対策
国際市場への進出は、企業にとって大きな成長のチャンスをもたらす一方で、複雑で多様な「海外税務リスク」への対応も求められます。特に中堅・中小企業が新たに海外市場に参入する際には、国内と同様の感覚で経営を進めてしまい、思わぬ課税リスクに直面するケースも少なくありません。
今回は、グローバル展開を目指す企業が押さえておくべき海外税務リスクと、その実践的な対策についてご紹介します。
1. 主な海外税務リスクとは?
(1) 移転価格税制リスク
多国籍企業間で取引される商品の価格やサービスの対価が、第三者間で行われる価格(アームズ・レングス原則)に基づいていない場合、課税当局から調整を受けるリスクがあります。特に海外子会社との取引が頻繁な場合には、移転価格文書の整備が不可欠です。
(2) 恒久的施設(PE)認定リスク
現地に駐在員を派遣したり、営業活動を行ったりすることで、その国で「恒久的施設(Permanent Establishment)」と認定され、法人税が課される可能性があります。
(3) 源泉徴収税の見落とし
現地法人が親会社に対して配当・利子・ロイヤルティを支払う場合、源泉徴収税が発生する国が多くあります。租税条約の適用を受けるには適切な手続きが必要であり、これを怠ると過剰な税負担が生じます。
(4) タックスヘイブン対策税制(CFC税制)
海外子会社の実効税率が一定以下の場合、日本の親会社がその利益に対して国内で課税される可能性があります。特にアジア諸国などの低税率国への投資では注意が必要です。
2. 税務リスクを回避・軽減するための対策
(1) 事前の税務調査と専門家の関与
新たな国・地域で事業を始める前に、現地の税制度や租税条約の有無を調査しましょう。また、現地の税務アドバイザーとの連携が、的確な対策につながります。
(2) グローバル税務戦略の策定
国内外を通じた一貫した税務方針を持つことで、取引価格や資金移動に関する透明性を高め、税務調査に対する備えも可能になります。
(3) 文書化の徹底
移転価格に関する書類、取引契約書、駐在員の職務記録などを適切に保管・整備することで、万が一の税務調査でも正当性を示す材料となります。
(4) 定期的な内部監査とリスクレビュー
年に一度など定期的に、海外事業における税務ポジションを見直すことが推奨されます。制度変更にも迅速に対応できる体制づくりが重要です。
3. 最後に:税務リスクを「成長の壁」にしないために
海外展開はビジネスの可能性を広げる一方で、税務リスクを軽視すると、予期せぬコストや信用の損失につながりかねません。適切な準備と専門的な支援を活用することで、税務リスクを「障害」ではなく「管理可能な要素」として扱い、グローバルな成長を確かなものにしていきましょう。
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