株式譲渡 vs 事業譲渡:税制とリスクの違いを比較

会社の売却やM&Aを検討する際、必ず検討するのが「株式譲渡」か「事業譲渡」のどちらにするかという選択です。どちらも会社の経営権を他者に移す手段ですが、税制面・法的リスク・手続きの負担などに大きな違いがあります。

この記事では、株式譲渡と事業譲渡の特徴を比較し、経営者がどのように判断すべきかを解説します。


1. 定義の違い

区分 株式譲渡 事業譲渡
対象 株主が保有する株式 会社が保有する事業の一部または全部
法人格 会社の法人格はそのまま継続 資産・負債などが個別に移転
譲渡当事者 株主と買主 会社と買主

2. 税制上の違い

■ 株式譲渡の税務

  • 売り手(株主)
    ・個人であれば、譲渡益に対して約20.315%(所得税+住民税)の税金が課されます。
    ・法人であれば、譲渡益は法人税の課税対象
    となります。
    ・売却収入は株主に帰属し、会社自体には税務上の影響なし。

  • 買い手(企業)
    ・取得した株式は会計上「投資」として扱われ、のれんが発生した場合、一定期間で償却可能(ただし税務上は償却不可)。

■ 事業譲渡の税務

  • 売り手(会社)
    ・譲渡益は法人の営業外収益となり、法人税等の課税対象になります。
    ・譲渡した資産・負債・契約ごとに個別対応が必要。

  • 買い手
    ・取得資産ごとに簿価計上。のれんが発生すれば税務上も償却可能(5年)


3. リスクと法的手続きの違い

項目 株式譲渡 事業譲渡
債務・簿外債務の承継 会社ごと承継(潜在リスクも引き継ぐ) 契約で明示した資産・負債のみ引き継ぐ
従業員の扱い 雇用契約は自動承継(就業条件は原則維持) 従業員ごとに再雇用契約が必要(労使合意が前提)
取引先・契約の承継 原則そのまま継続 契約の再締結や承諾が必要(賃貸契約、ライセンス契約など)
株主総会の承認 原則不要(非公開会社で定款が定める場合を除く) 原則必要(会社法467条により特別決議が必要)
手続きの煩雑さ 比較的簡易(株券や契約書の譲渡のみ) 煩雑(資産や契約ごとに個別対応が必要)

4. どちらを選ぶべきか? 判断基準のヒント

ケース 推奨手法 理由
オーナー社長が引退したい 株式譲渡 会社ごと引き継がせることで、従業員や取引先への影響が少ない
不採算事業のみ売却したい 事業譲渡 必要な事業だけを選択して譲渡可能
過去の簿外債務リスクが懸念される 事業譲渡 特定資産・負債のみ引き継ぐことでリスク限定が可能
買い手が大企業で、リスク回避を重視 事業譲渡 不要な資産・負債を回避しやすい
シンプルな手続きで早く取引完了したい 株式譲渡 契約書と株式譲渡手続きで完了できる場合が多い

5. まとめ

株式譲渡と事業譲渡は、税金・手続き・リスクの負担先が異なるため、どちらが有利かはケースバイケースです。

  • 全体を丸ごと引き継ぎたい・シンプルに売却したいなら株式譲渡

  • 不要な資産・リスクを除外したいなら事業譲渡

M&Aの初期段階では、どちらのスキームがより目的に合っているかを税務・法務・財務の視点から総合的に検討することが重要です。


▶ M&Aのご相談はこちら

当社では、譲渡スキームの比較検討、税務面の最適化、買い手企業との交渉支援まで一貫したM&Aサポートを行っています。お気軽にお問い合わせください。

中小企業のM&Aのお問合せ

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    CAPTCHA